死にたがりの私と 生きたがりの君
絵本を読み聞かせてるみたいだった。


「───アイツ、
自分が小児病棟出てからも
こうやって読み聞かせにいくんだ。
──惚れ直したぁ?」


ニヤニヤと笑う翔琉くん。




…………正解です。

胸がドキドキして仕方ないです!




「あれ、美桜!?」

暫くして私に気づいた楓が、
駆け寄ってくる。

またボボボと火がついたように
頬が熱くなってしまう。


「俺も居るんですけどぉ」


「翔琉!!」


翔琉くんの顔を見ていっきに
顔色がぱぁっと明るくなる楓。


ちょっとだけ…………ヤキモチです。



「ねぇ、カエちゃん~」

「カエちゃーん」


小さな子供たちが、
そう呼んで集まっては
楓の服の裾を掴む。



「ユキも楓のことカエちゃんって
言ってたよね?
ユキがつけたの?」


「そうなんだよ~ユキちゃんが
体育で怪我して半年くらい
俺と同じ小児病棟に
入院したときにさー
つけられてからずっとなの」


で、その間に付き合ってたのかな……?
ユキは自然消滅って言ってたけど、
楓に聞いた話だと
本当は楓の病気が悪化したからなのかな
私に、気を遣ったのかな。


小児病棟に通っていたことも、
ユキとの過去も……
私、まだまだ楓のこと
何にもしらないんだなぁ……。

そう考えると、少し寂しい。


「カエちゃんカエちゃん!
由加、ゆきであそびたいな」

由加ちゃんと名乗る女の子が
楓にそうせがむ。

「駄目だよ。由加はお外出れないだろ?」

楓はそう言って由加ちゃんを
宥めるけれど、他の子供たちまで
雪で遊びたいと騒ぎ立て始めた。

「ゆきだるまつくりたいー!」

これには、楓も困った。


「えっと……じゃあ由加、
ちょっとご飯の時の
プレート貸してごらん?
俺がちょっとだけ集めてきてやるから」


わぁっと子供たちから
歓声が沸き起こる。

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