死にたがりの私と 生きたがりの君



しばらくすると、お母さんは
先生と話があると一旦
病室を出ていって
俺はまたひとりになった。

鞄を置いていったから、
すぐに戻るだろう。


再びベッドに寝転ぶ。


────あつい………。


当たり前か、
熱あるんだから。
馬鹿じゃん。


頭ン中まで煮えそうだ。


水……………買ってくるか。



そう思って立ち上がると
案の定、視界が歪んで
足元がふらついた。


やば!


そう思った時にはもう遅くて、
お母さんの荷物を巻き込んで
床に大胆に崩れる。


「────痛っ……………
あー…………やっちゃったー」



病室の床一面に散らばる
お母さんの鞄の中身。


さすが過剰心配症。
余計なもの持ちすぎて
やたら荷物が多い!


わ、なんか靴べらが入ってる!
え、なんでタワシ!?


すぐ拾わなきゃと思うのだけど、
ついつい可笑しくて
ひとつひとつ眺めてみたくなる。



これなんか、フォトアルバム。
こんなの持ち歩いてるのか。


表紙には、『1998年~2001年』
と書かれている。



────………………あれ?



これ、俺まだ生まれてない……?

だって俺、2002年生まれだし。


てことはまさか、
新婚とか、まだカレカノ時代の
お母さんとお父さんの写真!?



───なにそれ、気になる!



ちょっぴり悪い気がしたけど、
やっぱり見たい!
結局、アルバムを開いた。



しかし、そのたくさんの写真に
写っているのは
若い頃の金髪のお母さんと、
知らない男の人。




───え…………………?



ヒヤヒヤしながらも、
俺は冷静に分析した。


つまりお母さんは、
元カレとの写真を捨てられないけど、
お父さんに見られんのが嫌だから
持ち歩いてるのか。


なるほど、心配症だ。



無理もないか、写真みる感じだと
同棲してたみたいだし。



元カレなら見ないにしようと
アルバムを閉じると、
一枚だけ、アルバムから
剥がれて落ちてしまった。



拾いあげて裏返した。


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