死にたがりの私と 生きたがりの君
「…………………美桜、ついたよ」
肩に優しく手を置かれる。
いつのまに、眠ってしまったのだろう。
駅まで走って、タクシーに
乗ったところまでは
確かに覚えていた。
だけど、ここはどこだろう?
もう、辺りは真っ暗。
携帯の時計をみると日付が変わっていた。
そして…………
【着信:52件】
何も言わずにポケットにしまった。
私たちはタクシーを降りて
歩き出した。
「楓……飛び出してきたのに
お財布はしっかり持ってるんだ?」
「自販機行くとこだったからさ
ラッキー」
なんだか楓はご機嫌だ。
久し振りに病院を出たからかな。
「これから結構な山道を歩くけど……
美桜、平気?」
「私は大丈夫だけど……楓は…」
「平気」
平気なはずはないけど、
立ち止まれない。
これからのことなんて
分からない。
想像もつかない。
だけど、楓が居るのなら
笑っていられるから。