死にたがりの私と 生きたがりの君
走り出す運命
美桜side
「ん…………………」
肌寒さに目が覚める。
一緒に寝ていたはずの楓の姿が、
そこにはなかった。
「楓…………………?」
気だるい身体を起こして、
急いで服を着る。
どこに行ったんだろ……………。
実は私は、まだこのお邸の
全部の部屋までは回れていない。
バスルームとかリビングとかキッチン。
あと、テラスくらいしか
使ってないからなぁ………。
その点、
楓はここへ来たことあるしなぁ。
よし、楓を見つけるまで
探検といきましょう!
廊下で一人
拳をあげてそう決めると、
目の前にあった
脱衣場の扉が開いた。
「あ、美桜。起きたの?」
中から出てきたのは、楓。
私のお邸探検は、
僅か2秒で終了。
───わぁっ、てか!
楓ってば上半身裸!!
思わず両目を手で覆うと、
楓はたちまちニヤニヤと
微笑みだした。
「昨晩、卒業したってのに
こんなのが恥ずかしいんですか?」
そ、卒業………
その、昨晩見せた
ドS気味な色っぽい目線で
私の額にキスをした。
「随分ウブな高2だね。
姉さん?」
かぁああーっと頬が熱くなる。
な、なによ!
楓が中2の癖にませてるのよ!
それに………楓の"姉さん"の言葉は
なんだか色っぽい……。
「てゆうか!何で服着てないの!?」
「あ、そうそう
寝室に置いてきたんだけど
上だけ見当たらな……」
そう言いかけた楓は、驚いた顔で
私の胸の辺りを凝視する。
…………?……なんだろ?
私が首をかしげると、
楓は不機嫌そうにむくれた。
「それ、俺のシャツなんだけどー」
「えっ!?
───あ、本当だ……
サイズ変わらないから間違えたよ~」
「るせぇ~」
あ、なるほど。
だから不機嫌だったのか。
かわいいやつめ。
すると、楓が小さくクシャミをした。
「あ、ごめん今ちがう服を………」
「いーよ。美桜、ばんざい」
ば、ばんざい?
よくわかんないけど
従って万歳をすると、
キレイにTシャツを脱がされる。
「ちょ……!私、
中着てないんだけど!」
「これは俺が着る
だから美桜はこれ着て」
そう言って手渡されたのは、
脱衣場の棚から取り出した
楓のシャツ。
「これじゃ結局楓のだし
私が脱いだ意味なくない?」
「全然ちがう。こっちのシャツは
美桜の温もりつき」
────なにそれ………。