死にたがりの私と 生きたがりの君
導かれているかのように
突然、息が苦しくなった。
咳き込んで、視界が渦を巻く。
左右も、上下もあやふや。
口元を覆っていた手のひらは、
赤い血で染められていた。
血を吐いてしまうなんてことは
今まではなかった。
だから、悟ったんだ。
きっともう俺は駄目だって。
────これで、
良かったんだ。
あんな、真っ白な病室で
死んだ時刻まで読み上げられるより、
誰も看取られずに
大好きな人だけを思って
最期を迎えられるなら。
──充分だよ、それだけで……。
狂い出す鼓動に比例するように、
どんどん走馬灯のように
色んな出来事が蘇った。
生まれて初めて、
だれかに必要とされた、出会いの日。
生まれて初めて、
嘘をついて叱られた、あの日。
生まれて初めて、
病気が怖いと打ち明けた、あの日。
他にもたくさん…………
たくさんの幸せを
美桜はくれたね?