死にたがりの私と 生きたがりの君


誰も悪くない。



なのに何でこんなに
拗れちまったんだよ。












帰ってこいよ…………楓。









お願いだから、
お願いだから居場所がないなんて
思わないでくれ。







お前が居なきゃ、
俺駄目なんだ………………。












「あ~あ。また泣いとんのか
翔琉は」




楓の病室にいた俺に
そう声をかけてきたのは、雪梛。




「悪いかよ」




「開き直るんかい。
────大丈夫やから、
楓のオカンが届けなくても
病院側が警察に届けとるから
きっと………すぐ見つかるで」


そう笑って、俺の隣に
腰をかける雪梛。


「うっせー!急に姉貴ぶんなよな!」


「年上や、文句あるか?」


うっ……………そうだな。



俺、なんか雪梛には弱えんだよなぁ。
いつも一歩先を歩かれてる気がする。

つまり、
馬鹿な俺の考えることなんて
ほぼお見通し。


「俺さ………」


だからつい、
言うつもりなかったことまで
するりと吐いちまう。


「楓がもし病気じゃなかったら
帰ってこいなんて思わなかったかも」



少しだけ驚いた表情の雪梛。

「なんでや?」



「ん~だってさ。
自由にしてやりたいじゃん?
二人が姉弟だなんて誰も知らねーとこで
ひっそりと幸せになってほしいじゃん」




「…………………うん」




「───ん──まぁ、そうなったら
俺は寂しいけどな?」




「ウチだって……
二人おらんと楽しない」



雪梛……………少し痩せたな…。



帰るかもわからねーやつの
帰りを待つって、
正直しんどい。


けど、俺は待つ。




あいつが帰ってきたとき
絶対に両手広げて迎えるために。








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