死にたがりの私と 生きたがりの君
"強がり"そう見えるらしいけど、
それだけじゃないんだ。
本当にわからないんだ。
「俺、死んだことないし
もうすぐ死ぬなんて言われても
わかんない」
だって、俺生きてるしね。
「だけど死にそうになる度に
嫌だって思えたから
だから生きたいって思ってるだけなんだ。
単純な感情だけど
今はそれが支えだから」
5時ちょい前。
すっかり春めいた3月の景色が
一番哀しくなる時間帯。
でも
翔琉には似合わないよ、
哀しい春みたいな顔。
「お前の話…………ちょっと難しくて
ついていけねぇ
これが偏差値10差の壁か…」
そんなことを言うのは、翔琉の優しさ。
「ん……まぁ。
いつかわかるんじゃないか?」
こんなことを言うのは、俺の弱さ。
だからこそ
釣り合うんだ、俺達は。
翔琉の強い力で
情の縄を引っ張りすぎたら、
後ろに倒れてしまうから
それを俺はちょっとだけ弱い力で
反対側から引く。
その縄は水平になるんだ。
そしてその縄に支えてもらうのが俺。
ひとりじゃ駄目なんだ。
翔琉も、俺も。
だからこそ、
ここに居ていいんだと感じさせる。
翔琉はさ、知らないかもしんないけど。
美桜ばっかりが俺の支えじゃないよ。
今は、俺を必要としてくれる人
皆が支えだ。
「なんか安心したら眠くなっちゃった…」
「──安心?何に?
ま、いーけど。寝ろよ、
美桜さん来るまで居てやるから」
「ありがと……………」
安心感に包まれて目を閉じたら、
すぐに眠りこけてしまいそう。
久しぶりだ。
こんなにぐっすり眠っているのは
気を失った時くらいかもしれない。
情けないけど、
心の底ではずっと怖かったんだ。
目を閉じて、眠って
それが最後だったらどうしようなんて。
馬鹿みたいだけどさ、
そんな風に不安で眠れなかった。
だけど今は違う。
寝つくのを、翔琉が見守ってくれて
目覚めるのを美桜が
待っていてくれるんだから。