死にたがりの私と 生きたがりの君
「──ね、そのまんま
聞いて欲しいんだけど」
「──ん?」
こっちを向かない楓に、
ちょっとだけ嫌な予感がした。
だけど、もう逃げたくない。
「今月中だって、俺」
ぞわっと寒気が走る。
何が"今月中"なのかなんて
聞かなくてもわかる。
だから何も訪ねかった。
「うん……」
震える唇で返事をした。
「俺、頑張るから」
「うん………」
「だから、美桜も
諦めたりしないでね」
「するわけないじゃん…………」
本当は抱き寄せたかった。
今月中には居なくなると言う
君の小さな背中を引き留めるみたいに。
だけど、出来なかった。
そのままで、と言った君が
ずっとまっすぐ前を見据えていたから。
雲ひとつない、夕暮れを。
「綺麗だね」
「──うん」
「だけど、見てるだけでいいや。
あそこにはまだ行かない」
「───行かせないよ……」
私も、強くなるから。
これからは、強くなるから。
だから泣かないよ。
「───もう日が暮れるね」
真っ赤な夕焼けの空を
睨み付けた楓が
病室から出られたのは、
この日が最後だった。