その唇に魔法をかけて、
「花城さんにも怒られたよ、馬鹿野郎！　って」

「響兄ちゃんに？」

　花城に怒られたのが意外だったのか、彩乃はしかめていた顔から目を丸くする。

「陽子さんとか……私が花城さんに色目使ってるみたいに誤解してるけど、そんなんじゃないよ、私だって自分が特別だなんて思ってない。それに花城さん、すごい剣幕で怒ってた」

　あの時、生まれてしまった花城への気持ちを、彩乃だからこそ全て自分の気持ちを話さなければと思った。時には話さなくてもいいことだってあるのはわかっていたが、自分に嘘はつきたくなかった。もし、彩乃がわかってくれなければ、その時はその時で諦めるしかない。

「昔からそうだったけど、私の周りにいた大人は、私がどんなに悪いことをしてもあんなふうには怒ってくれなかった……本当に心配してくれたんだって思ったら嬉しかったの」

「美貴？」

「……私、花城さんが好き」

　ついに言葉にして告白してしまった。そしてふたりの間にしばらく沈黙が続く。彩乃は絶句して、なにか言葉を考えているような表情をしている。どんな言葉が彩乃から発せられるのか、緊張の面持ちでじっと彼女を見つめていると、彩乃の表情がふっと崩れた。
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