その唇に魔法をかけて、
キラキラとどこまでも海の水面が今日も宝石のように輝いている。

 先ほど、かえでから渡されたフルフェイスのヘルメットがすっ飛んでしまうのではないかと思うくらい目にも止まらぬ速さで景色がスクロールして、美貴は必死にかえでの背中にしがみついていた。

「かえでさん! こ、怖い!」

「だ~いじょうぶよ! しっかりつかまってて!」

 彼女の自慢だという大型バイクに乗せられ、美貴はタンデムシートで初めて味わうフルスロットルの疾走感に恐怖を感じつつも、胸は早鐘のように躍っていた。そしてバイクで走ること数十分――。

「さ、着いたわよ」

「は、はい……」

 目的地に着き、かえでから手を添えられてなんとかバイクからおりたが、まるでジェットコースターに乗った後のように膝が小さくガクガクと笑っておぼつかなかった。

「ごめんね、もしかしてバイクに乗るの初めてだった?」

「はい……」

 乱れる心臓をなんとか宥め、改めて辺りを見渡すと、そこは小さな寺のある墓地だった。
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