その唇に魔法をかけて、
「あ。これ飲みやすい」

「そうか? 果実酒みたいな日本酒だって言われたから、お前でも飲めると思ってさ」

 酒を舌で転がしてみると、それは白ワインのような口当たりで飲んだ後味もさっぱりしていた。

「これ、きっと女性受けするんじゃないでしょうか」

「あぁ。俺もそう思った」

「日本酒だけどワイングラスで飲んでみてもいいかもしれませんね」

 なにげなく言った言葉に、花城が意外そうな顔をした。

「お前、なかなかいいこと言うな。大吟醸は温度変化に適していないから、足があるワイングラスで飲むのはおすすめかもな。あとこれ、純米吟醸や純米酒は逆に温度変化で味わいの違いが楽しめる。だからこういった類の酒はお猪口が適してるんだ……ってお前、ちゃんと俺の説明聞いてるか?」

「え? はい! もちろん」

 楽しげに酒の説明をしている花城を見ていると、天真爛漫な子どものように思えて思わず頬を緩めた。

(花城さんってきっとお酒が好きなんだな……)
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