その唇に魔法をかけて、
「響也、おじさんのことだから近いうちって言ってもいきなり明日来る可能性があるから、いつ来てもいいように準備しておいたほうがいいんじゃないかな」

「……わかってるよ」

 いつ頃来るのかとも告げず、花城龍也は陽気な口調で「近いうち」とだけしか言わなかった。気ままな人だからこそ油断はできない。

「従業員には俺から説明する。親父が来ると色々面倒だからな」

 花城は頭を掻きながら、今日何度目かになるため息をついた。
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