その唇に魔法をかけて、
「あっ! ええっ!?」

 花城の手の中でぐにゃりとカードが曲がった。ものすごい力であっという間に四つ折りにされると、それを唖然としている美貴の手のひらに戻した。

(ちょ……ちょっとおおお!?)

 かわいそうなくらいに折れ曲がり、修復不可能なカードが手のひらでコロンと転がる。

「な、何するんですか!? これはパパの大事な――」

「パパの援助はもう終わりだ」

「っ……!」

 あまりの動揺に美貴は父をパパと口走ってしまい、口を抑えることも忘れて金魚のように口をパクパクとさせた。

「いいか? お前はもう立派な社会人なんだ。自分で働いて、稼いでその金で今度から飯食っていくんだ。いつまでも親のスネかじってんじゃねぇよ」

 その時、美貴は花城の本性を垣間見たような気がした。その低い声に反論もできず、美貴は唖然とするしかなかった。

「慣れない土地に来て東京とは全然違う生活にストレスもたまるかも知れないけどな、お前がここへ送り込まれた意味をよく考えろ」

「……はい」

(うぅ~、だからってカードをこんなふうにしなくてもいいのに)

 すると、唇を噛んで俯く美貴の頭の上に花城の大きな手が載せられた。

「大丈夫だ。何かあれば俺がお前のこと……守ってやるから」

「え……?」

 美貴が顔を上げると、柔らかに微笑む花城と視線がぶつかる。頭に載せられた手は次第に髪を撫で、頬を撫で下ろしていった。

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