大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
美緒ちゃんのひとつ年下なんだ。とか、お互いの両親が仲がいいの?とか、へえ、サッカーしてたんだ。などと言う情報収集からやっと解放され、キャンパスを後にする。きっと、グループラインはすごいことになってるかも。しばらく開かないでおこうと心に誓う。
虎太郎は、笑って、
「美緒ちゃんって面白いね。」と言った。私はため息をついて、
「4月に入ったら、有名人になってるかも。」と言った。虎太郎は
「友達には秘密にしたかった?」と聞いてくる。私は首を横に振る。まあ、許婚がいるオトコに迫って来る女の子もいないよね。と思って、悪いことばっかりじゃないかと、気を取り直す。私は
「虎太郎どっか、レストラン行きたい?」と聞く。すると、
「食べる物を買って、部屋で食べたい。」と言ったので、駅前で買い物することになった。あー、そうだ。と
「あやめ、部屋の鍵、俺の分もある?」と聞いてくるので、私は、赤くなって頷く。えーと、本当はいつでも遊びに来ていいよ。の印に、今日は渡すつもりで、作ってあった物が、部屋に置いてある。お揃いのキーホルダーまで、つけてあるんだけど、チョット、恥ずかしかったかな?と、思いながら、歩くのが遅くなる。と虎太郎は、
「大丈夫だよ。誰もあやめを怒らないって。俺が勝手に押しかけるんだからさ。」と私が、考え込んでいたのを誤解していて、私の手を取って、歩き出す。いや、家族にイロイロ言われるのは、今に始まったことじゃないし、だいたい、あの人たちは私たちをからかって、遊んでいるとしか思えない。
この間は帰った時、桜子ママに、生理遅れたら、ちゃんと調べるのよ。と言われて、キョトンとしたら、えっ、あんた達、まだなの?と笑われたばかりだ。きっと、一緒に住むって言っても、別に反対はしないんだろう。と思って、
「何が食べたいかな〜 」と言いながら、虎太郎手を握り返した。
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