夏時計
「禅、お前なんかいい事あった?」
あれから一週間が過ぎた8月の中旬。
最近サボり気味だった夏季講習に顔を出すと
同じクラスのマーシーが腕を組みながら僕を見下ろしていた。
「別に何もないよ。マーシーこそどうなんだよ、マリちゃんとは。」
「だぁーっっ!!お前声がデカいっつーのっ!」
明らかに僕より大声でそう口にしたマーシーのせいで、周りのみんなの視線が一気にこちらへ向けられる。
クーラーの聞いた教室でマーシーは、顔を真っ赤にしながらキョロキョロと辺りを伺うように見渡した。
そして口元に手をあてながら小声で
「実は、明日デートなんだよね~!」
そう言いながらイシシといやらしい笑顔を浮かべる。
「…へぇ、よかったじゃん。」
「何、その冷たい態度!俺いじけちゃうっ!」
「てか、それ。キモいんだけど。」