夏時計
マーシーとは言わば、腐れ縁ってやつ。
マーシーは僕の事を
『幼馴染み』だと言うけれど、こんな片田舎でそんな事を言ったら、みんながみんな『幼馴染み』になってしまう。
幼稚園も小学校も中学校も、知らない子なんて居ないのだから。
「あ~ぁ、早く終わらないかなぁ。」
と、ぼやくとマーシーがチュッパチャップスを僕に差し出して
「何?何か予定あんの?」
尋ねてきた。
「……別に。」
素っ気なく答えて差し出された飴を遠慮なく受け取った僕。
パリッと袋を破くと、斑模様の丸い飴が顔を出した。
彼女、深羽と出会ってからの僕は、何だか毎日上の空。
初めて話したあの日から今まではこの夏季講習に来る為だけに使ってた無人駅に、足しげく通うようになって。
彼女と話す時間が、僕の夏休みを埋めてゆく。