夏時計
あぢぃ…。
心の中で何度もそうぼやきながら僕は背を丸めて畔道を歩く。
そうでもしなきゃ、遮る建物すらないこの糞田舎で、容赦なく照らし出す太陽を避けられないからだ。
まぁ、どう歩いても大して変わりなんかないのだけれど。
要は気持ちの問題。
太陽を避けて歩こうなんざ、到底無理な話なんだから。
「あちぃっつーの…。」
もう何度目かわからない独り言を吐き出して
制服の袖で噴き出す汗を拭ってみせた。
耳障りなセミの鳴き声に田んぼを横切る生温い風が僕を包み込む。
はぁ、と小さく溜め息をついて、ようやく着いた無人駅の木陰で熱してしまいそうな体を休めた。
ジリジリと照らす太陽。
時たま木の間から漏れる日の光。
――君に出会ったのは
そんな焼けるような夏の真ん中だった。