怖いオトコとチョコレート
 で、でも、顔が近い。

 もうちょっと離れて。

 心臓が口から出ちゃう。

 お店のマスターらしき人が、豊川くんにコーヒーを出して、頭をなでて向こうに行った。

「ここにいて」

 黒岩くんが私の耳元でそういうと、私の体はぴくっと反応した後、固まってしまった。

 黒岩くんは、豊川くんの前に座った。

 豊川くんの目から涙があふれた。

 わんわん泣いている豊川くんを、どうしてあげたらいいかわからず、じっと見ている黒岩くん。

 豊川くんがちょっと落ち着いてきたころ、黒岩くんが立ち上がって私の方に来た。

「チョコ」

< 16 / 23 >

この作品をシェア

pagetop