怖いオトコとチョコレート
 私は、黒岩くんの差し出された手のひらの上に、チョコをのせた。

 いつもならすぐに口に入れるのに、今日は違った。

 黒岩くんは豊川くんの目の前に、そのチョコを差し出した。

 豊川くんは少し顔を上げ、そして少し笑って、そのチョコを食べた。

 その時、奥から女の子の声がした。

「豊川!こんなところにいたの?」

 黒岩くんが豊川くんから離れ、こっちに来る。

 黒岩くんの向こう側で

「ほら、あんたの大好きなコーヒーとフランボワーズのムース。これでも食べて元気出せ!」

 と言っている声が聞こえる。

 黒岩くんは私と目が合うと、

「行こうか」

 と言った。

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