君にアイスを買ってあげるよ
会社終わりに、待ち合わせたロビーに行くと沢田さんはもう待っていた。
そわそわと時計に目をやったり、ガラスに写る自分の姿を確認したりしていた。
「待たせてすみません」
沢田さんは時計を見て聞いてきた。
「遅い!森田さんはどうしたの、一緒じゃないの」
「すぐ行くから、先に行っててって。経費の清算があるそうですよ」
はあっとため息をつかれる。
分かってることだけど、改めて森田さんが好きなんだよね。
「何か食べたい物ありますか」
「森田さんの食べたい物」
「多分、森田さんも聞くだろうけど、女の人のほうが詳しいだろうから」
自宅と家の往復な僕からしたら、女の人のネットワークは凄くて、美味しい物のためならあちこちに出没する。
わいわいと連れだって出かけるのは圧巻だ。
「違うのよ、店の種類が。行く人によって違うの」
「確かにね」
女の子が友達と食べるグルメと、恋人どうしで囲むテーブルは違うかもしれない。ましてや…お邪魔虫と言っていい僕がいる。
「無難な居酒屋かな」
「とりあえず、森田さんがいてくれたらいいの」
ハイハイ、オマケですみません。
その時、走り出しそうな勢いで森田さんがやってきた。
「行くぞ、橋田。早く行かなきゃ店が閉まる…いや値引き商品がなくなってしまう」
大股で早足の森田先輩の後から、駆け出しそうになりながら付いていく。
「え…値引きってドコ行くつもりですか」
「駅前のスーパーに決まってる」
「なんで」
「なんでって…今日は鍋だからだよ」