君にアイスを買ってあげるよ

スーパーに着いたら、カートにカゴを入れて押していく。

季節の果物から並んだ店内は、明かりが満ちていて、暖かく清潔で、少しのざわめきに満たされていた。

「お鍋は白菜だよね」

半分に切られた白菜がカゴに入る。

「俺さ、もやし喰いたい」

考えこむ森田さん。スーパーでもやしを睨んでいなかったらカッコイイはずだ。
「モツ鍋ですか」

「こう…豪華に海鮮といきたいんだけど、合わないかな」

「森田さんが食べたいなら買おうよ」

ささっと沢田さんがカゴに入れる。

「いや、今日は止めとく。もやしって合わないよな。安いしシャキシャキして旨いけど持たないだろ」

そのまま魚売り場まで歩いて行ってしまう。せっかく沢田さんが買おうって言ったのに、森田さん変だ。

笑いながら買ったらいいのに。

魚のケースで品定めしている森田さんに沢田さんが追いついて、何事もなかったように選びはじめる。

カートを押しながら追いつくと

「橋田はなに喰いたい」

森田さんが、体をずらしてケースが覗けるようにしてくれる。

蟹や鱈、帆立などパックされた海鮮が行儀よく並んでいる。

時間帯からして、ガラガラな陳列だとしてもおかしくないけれど、どの食材も一、二パックは置いてあった。

24時間営業って凄いな。

「鍋用のセットがあるから、それなんてどうです。あとは自分の好きなのを買い足したら」

ちんまりと鱈や海老の並んだパックがあった。

これだけだと寂しいけど、いろいろ種類がないとつまらない。

「おーじゃ俺、海老担当な。沢田は帆立で、橋田は鱈でいいや」

にやっと笑った森田さんがパックを手に取る。

「ちょっとそれ酷くないですか。僕に海老や帆立はくれないんですか」

「これには海老と帆立は二つづつしかないだろ。我慢しろ橋田」

「ええっ買いましょうよ、海老も帆立も」

結局、鍋セットは止めて鱈、海老、帆立がカートにおさまる。

僕と森田さんとのやり取りを沢田さんは笑って聞いて、時々合いの手なんて入れてくる。

わいわいとお酒やおつまみも用意して、僕たちは森田さんの家に行くことになった。

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