君にアイスを買ってあげるよ

「あたし森田さんが好きなんです。ずっと好きでした。屈託ない笑顔が好きで、誰にでも優しくて」

自分でなくても、告白の場面に居合わせたら、気恥ずかしさが先にたつ。
ましてや、傍観者でしかないじゃないか。

居場所がなく席を立とうとしたら、森田さんに引き止められた。

「きちんと責任とれ、バカ」

「森田さんに向けられた気持ちじゃないですか」

「でも橋田が言わなかったら、沢田は言うことはなかった。俺だって聞くことはなかった」

髪をくしゃりとまぜっ返す。

「あたしのこと嫌いですか…少しは好きでいてくれますか」

「沢田、俺はね、君に恋愛感情は持てないんだよ…妹みたいな…家族みたいなものだから」

沢田さんは、いやいやと身をよじる。

「それなら誰も好きになんてならないで」

「それは無理だ。わかるだろう」


「森田さんはいるの…好きな人」


「気になるだけだ」

歯切れが悪くなる。

「ただ側にいたいと思うだけだ」


「森田さんでも叶わないこと、あるんですね」

「そんなことばかりだろ、生きてくなんて。叶ってばかりなら有り難みがないからな」

やっと森田さんにも沢田さんにも笑みが浮く。

「でも応援しませんよ、あたし」

「自分でどうにかするしかないだろ」

「苦労しそう」

苦笑いとかすかな笑み。二人には気持ちを通わせた後の穏やかさがある。

羨ましく思いながらも、森田さんの思い人は想像できなかった。

森田さんを困らせる事ができる人物。森田さんが振り回されるような人物なんて思いつかない。

わがままなのかマイペースなのか。いつか会ってみたい。


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