君にアイスを買ってあげるよ
残業させられてます
あっっまい。
給湯室から森田先輩が持ってきたマグカップには、なみなみとした紅茶にたっぷりの砂糖。
「コーヒーじゃないんですか」
「甘いコーヒーなんか飲めるかっ頭に砂糖入れとけ」
普段の先輩はコーヒー党だけれど、疲労から甘いものがとりたくなると、激甘紅茶で凌ぐようだ。
部活の先輩も、あんドーナツが好物だったっけ。プログラマーでチョコ好きな人もいる。
「詰めるぞ」
とある企業に対してのプレゼン資料作成の手伝いをしている。
先輩の案に沿って、過去の資料から数字を拾ったり、数字をグラフ化したりと、パソコンと睨めっこをしている。
時計は残業だと言っている。外回りから帰って来た先輩に付き合わされたのは、定時30分前からだからだ。
「なんか、頭回んない」
「糖分とれよ」
がっさがっさ引き出しを漁ると、綺麗なラッピングのままのチョコレートが出てきた。
「これでも喰え」
「バレンタイン?嫌みですかっ」
「馬鹿いえ、義理に決まってる」
ゴディバのどこが義理なんだか知りたい…。これをくれた女の子を考えて哀れになる。ごしゅーしょーさまー
まぁね、チョコに罪はない。食べられるために作られたんだから、食べてやらなきゃ。
「先輩ってニブチンだ」
「なんで」
「そういうとこからダメです
義理とか義理じゃないとかじゃなくて…人を見たら」
「毎日、見てるし、会ってるぞ」
「オッサンじゃなく、ね」
どんな人となら、付き合うって言うんだろ。
とてつもない謎だ。