君にアイスを買ってあげるよ
梅の実

会社に来ると、甘い香りが漂ってきた。

少し早いけれど、桃かな。熟した桃の皮をむいてかぶりつくのは、美味しい。

小さい頃、切ってもらった桃でなく、まるまる一個の桃が食べたくてただをこねた。高いから、贅沢って言われていたけど頂き物で箱の桃を貰った時に、初めて許してもらえた。

俺だけの桃。嬉しくて、よーく選んで皮の赤みが多い美味しそうな桃を選んだ。
そうっと洗って、皮も手でむいて。頬張ったら、甘くて美味しくて。夢中で食べていたら、果汁があふれて、ぽたぽたと肘まで伝った。

慌ててタオルをよこしたお母さんが、膝に敷いてくれて、ほらねって顔をした。

知らなかったのは、かじりついた桃の味だけじゃなくて、桃の果汁は染みになることもだった。

普通に洗濯しただけのシャツには、ぽつぽつ茶色の染みが出来てしまい、早く漂白しなかったことがバッチリ分かってしまった。



あれから、子供心にかじりつくのは止めようと思った。




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