明日へのラプソディ
「終わったんなら帰ったらどうですか?」
そう言いながら隣のデスクに座ったのは後輩の香山望美(カヤマ ノゾミ)、25歳だったかな。
「帰れるわけないでしょ。データの整備全然終わってないんだから」
卓上カレンダーをデスクの右隅に戻して、ノートパソコンと向き合う。
「そんなデータの整備なんて、新入りにさせたらどうですか?主任のする仕事じゃないんじゃないですか?」
と、言いつつ、香山さんはこっちに椅子ごと向いて私のパソコンを覗き込む。
そう、うちみたいなさほど大きくない会社では入社して10年も経つと、必然的に『主任』なんて嬉しくもない肩書がついてしまう。いや、仕事一筋、この会社に骨埋める気ですってスタンスの人なら嬉しいかもしれないけど、私の場合は違う。