明日へのラプソディ

「いや、そんなに俺に会いたかったのかと思ってさ」

「っ!」

もし、今、私の顔が紅くなりつつあるのなら、それは美術館の空調のせいではないであろう。
いちファンアピールをしたつもりが、愛の告白みたくなってる…。今までの人生でこんな露骨に『会いたかった』なんて言ったことないよ〜。

「あ、いや、だから、その…」

ダメだ、動揺して上手く言い訳が出て来ないっ。

「…ありがと」

甲斐くんは、絵を見たまま、小さくそう呟いた。

「え?」

「俺の方の諸事情は…」

「…」

「あの会場、グランドピアノがあるって話で、だったら、俺が行って生演奏しようって事になってたんだけど。いざ行ったら、ピアノはあるにはあったけど、全然使ってなかったみたいで調律が出来てなくってさ。しかも音が出ない箇所もあって。だったら、生演奏よりオケでやろうって事になったんだ」

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