明日へのラプソディ
甲斐くんは、携帯電話を握りしめて、こっちを見た。
「…番号」
嘘っ?番号交換してくれる気?
「あっ!」
「どうした?」
「…携帯電話、香山さんに預けてる…」
「番号覚えてないの?」
「自分に電話ってしないから…」
「…だよね。フッ」
甲斐くんは脱力したように笑うと、携帯電話をズボンのポケットにしまってしまった。
「4度目の偶然があったら…」
「…」
4度目の偶然?
「その時は、番号教えてよ。…哉子、さん」
へ?哉子さん?
「うん…」
「じゃ」
甲斐くんは、軽く右手を挙げると足早に展示会場を出て行った。