明日へのラプソディ
「お待たせしました。町田さん、今、いらっしゃいましたので」
「あ、は、はい」
伊東さんは、そう私に告げると後ろを振り返った。
「専務、こちらです」
と、伊東さんの後ろから『紳士』という言葉がピッタリの優しそうで中肉中背、これと言って特徴のない、多分、1度では覚えられそうにない顔の男性が、一目で高級だとわかる印象的なスーツに身を包んで現れた。
「遅くなりまして」
と、その人はニコヤカな笑顔で頭を下げることなく、詫びを言われたので、その圧に押されて、私は、思わず立ち上がって、
「あ、初めまして。町田哉子です」
と、深々と頭を下げてしまっていた。