明日へのラプソディ
そして、顔を上げて前を見た時、お見合い相手の阿部商事の専務の阿部隆行さんと、伊東さんの向こうから、ゆっくりこっちに向かって歩いて来る甲斐くんと、目が合った…。
「じゃ、専務、私はこれで。お電話頂きましたら、お迎えに上がりますので」
「ああ」
「では、失礼いたします」
伊東さんは軽く会釈をすると、甲斐くんとすれ違うように行ってしまった。
「座りましょうか」
と、阿部さん。
「あ、はい」
そして、丁度座った時、連れの男の人と一緒に甲斐くんが私の横を通り過ぎた。
「…」
甲斐くんがチラッと阿部さんの方を見た気がした。
「じゃ、ここに座ろうか」
甲斐くんの連れの男の人がそう言って、甲斐くんは、私と背中合わせの席に座ってしまった。