明日へのラプソディ

甲斐くんと電話番号を交換したものの、甲斐くんから電話がかかってくることはなかった。でも、それはきっとCDの、発売に向けて忙しいから、だと思うので、私からも電話をしなかった。それでも、電話番号を知らなかった時とは全く違った、安心感があり、たった11桁の数字がまるでお守りのように、私の心を穏やかにしてくれていた。

そんなある日、甲斐くんから短いメールが来た。

『CM明日から流れる』

うわ〜っ、ついに甲斐くんの夢が叶う時がきたんだぁ。私は、

『おめでとう。CMが流れたら、正座して見るね』

とだけ、返しておいた。会いたいとか、声が聞きたいとかは、書かなかったし、書いて、今がむしゃらに頑張っている甲斐くんの負担になりたくなかった。

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