明日へのラプソディ

若くて綺麗な女優さんが映し出される画面の右下に小さく、小さく、『PIANO・甲斐闘吾』と書いてあった。

「ホントに甲斐くんなんだぁ…」

7時からの番組が始まってからも、しばらく正座を崩せなかった。

それから、その後、番組の合間にも2度、バージョンの違う口紅のCMが流れた。その都度、お約束通り、正座して見せてもらった。

…凄いな、甲斐くん。

やっぱり、少しでいいから、声が聞きたい。電話してみようか。…迷惑かな。迷惑だったら出ないよね。よし、かけるだけかけてみよう。いいよね、そのくらい。

「ふぅ〜」

大きく深呼吸して、震えそうになる両手でしっかりと携帯電話を握りしめ、甲斐くんへ電話をかけて、携帯を耳に当てた。

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