明日へのラプソディ

この席、確かに近いけど、彼らにとっては近すぎて真下を見るようになる。従ってなるべく多くの人を見ようとする彼らの目線は私達の頭上を通り過ぎていった。と、いうことは、やっぱり『じんちゃん』に下を向かせて目線を頂くには…。

「うっ、ううん」

喉の調子を整えて。

じんちゃん、来たっ!

「ノゾミンっ、そのうちわ、しっかり振りなさいよっ」

「ラジャーっ!」

じんちゃんはこうくんと一緒に歌いながらゆっくり花道を歩いてくる。
イヤーモニターで片耳を塞いでるから、ちょっと叫んだぐらいじゃ恐らく彼らの耳には届かない。

チャンスはじんちゃんが目の前を通り過ぎる一度きり。

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