明日へのラプソディ
開店したばかりの時間帯の為か、まだお客さんの姿はどこにもなく、カウンターの中に声の主らしき男の人が1人、グラスを拭いているのが、確認出来た。
「行きますよ、主任」
「うん」
香山さんが、後ろの私に小声で呟きながら、カウンターに歩み寄る。置いて行かれないようについて行かなきゃ。あっ、ヤバいっ。な、なんか、足が、足が震えるぅ〜。カウンターに近づくと再び、男の人が、
「お好きな席へどうぞ」
と、言う声がした。聞き覚えがあるようなないようなダンディな声…。み、見れない、緊張し過ぎて、声の主の方を見れないまま、カウンター席に座った香山さんの横に、私も俯いたまま座る。もはや、顔を上げてカウンターの中の人の顔を確認するタイミングがわからない。