…だけど、どうしても

次の瞬間には彼女の両肩を思い切り壁に叩きつけていた。
ドンッ、という音とともにエレベーターが揺れた。

「いっ…」

痛い、という言葉を、彼女は咄嗟に飲み込んだ。俺が距離を詰めたからだ。彼女の耳に唇を寄せる。

「他の男になんか渡さない。」

低い声でその言葉を耳に直接流し込むと、彼女の身体がビクンと震えた。

チン、とエレベーターが指定の階に着いたことを知らせる。

俺は再び彼女を引きずって、自分の部屋に押し込んだ。
ドアを閉めるなり、彼女の頭をさらうように引き寄せ、その唇に自分の唇を押しつける。

「んんっ…!!」

彼女が身体を固くしてもがくが、俺は、彼女を抱きすくめ、背中をドアに押しつける。

「…はっ…ん」

彼女の唇が僅かに開いた瞬間に強引に舌をねじ入れる。

「ん…!!」

舌を捉える。
逃げるなんて、許さない。
激情にかられたまま執拗に攻め立てていると、彼女の膝が、かくんと折れた。

細い腰を片手で支えて、無理やり立たせたままふと目を開くと、彼女が苦しげに眉を寄せているのが目に入った。

「……」

俺は思わず腕から力を失った。
唇が離れ、唾液が互いを繋ぎ、そして離れた。

「はあ、はあっ…」

彼女は開放されて、乱れた呼吸を繰り返しながら言葉を発することもできず、力なくドアによりかかった。

「…ごめん」

俺は掠れた声で言った。
正気に戻りつつあった。何をしようとしてたんだ…彼女を、犯そうと?
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