…だけど、どうしても
「ごめ…」
だけど、もう。
俺はどうしようもない。
昼間から暴れ続けている欲望が、決壊しかけていた。
目を閉じ、眉をぐっと寄せ、あらん限りの力を振り絞って理性をかき集めた。
彼女の両腕を、今度こそ痛めつけないようにそっと捕まえる。彼女がこの狂った俺を振り払って逃げられるように。
「傷つけたいわけじゃないんだ…
助けてくれた礼を身体で払えなんて言うつもりも毛頭ない。
だけど、どうしても…俺はもう…あんたが欲しくて欲しくて欲しくてどうしようも…」
「……」
彼女は逃げ出さず、何も言わず俺を見つめている。
そのうるんだ目がもう、俺をおかしくする。
俺は屈んで、彼女の肩に額を埋めた。
「っ…頼むから…嫌なら、逃げて。逃げてくれないと…俺、もう、止められない。」
柔らかい力、で。そのはずだ。彼女を力づくで押さえつけてはいない。俺は自分の震える両腕に意識を集中させて、そう自分に確認する。
「逃げるなら、早くっ…」
もうどうしようもなく俺は懇願していた。逃げるなら。もう一刻も早く。俺が理性を失わない今のうちに。
「……」
けれど、彼女は。
俺の髪に優しく触れ、両手で俺の頭をそっと挟んで、上向けて。
冷静さのかけらもない、情けないに違いない、俺の顔を自分に向けさせると、唇を寄せ、ーーキスをしてきた。
「……っ!!!」