…だけど、どうしても

4.

洋館風というよりは、もう、ちょっとした城みたいな作りの一軒家。

入り口の前に広がる仰々しい階段にはご丁寧に赤いカーペットが敷かれ、内部に続いている。
わざわざ好んでは来ないが、ここは知っている。

パーティーは久々だった。様々な人間がそれぞれの思惑で近づいてくる。女も、男も。
学生の頃はそれでも面白がってあちこちに顔を出していたが、仕事にのめり込んでからはくだらないとしか思えなくなっていた。

グッドラック、と高木は言って、仕事を終えるとさっさと帰宅した。
てっきり一緒に来るものだと思っていたが、よく考えると高木がパーティーに顔を出すのは俺の代理の時に限っていて、一緒に出席したことなどなかった。
あいつもこういう場が好きなわけではない。仕事でなければ帰るだけだ。俺はもう一度高木に礼を言って、一人でここへ来た。

大広間へ入ると、一瞬、ざわめきの注意が一身に注がれたことに否が応でも気づかされた。芹沢だ…珍しい…芹沢?ほら、芹沢コーポレーションの…

俺は苦笑してぐるりと周りを見渡す。
仕事を終えてからすぐ、早めに来たつもりだったが、既に人でいっぱいだった。

顔見知りと会っても、軽い挨拶に留めながら俺はゆっくり歩き回る。ウェイターが差し出してきたグラスの中身も確かめずに受け取る。
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