…だけど、どうしても
社交界に出入りするような家の者だということ以外には特になんの共通点もなさそうな私達は、実は二人とも留学経験があることもわかった。
彼は、高校に入学したはいいけれど、すぐにアメリカに渡り、飛び級して大学を卒業してから帰国し、有名私大に編入し、大学の3、4年を過ごし現役で卒業している。
とんでもなく有能なのね、と私が驚くと、「爺さんに早く後継げってうるさく急かされてるから。」と苦笑した。
一方フランス文学を専攻している私は、大学2年を終えてから休学し、一年間フランスで過ごしている。今はこうして日本で大学3年生として復学している。
彼も私の経歴に意外そうに眉を上げて、へえ、と言った。
「よく許したな、あの過保護そうな執事が。」
私は、つい喋りすぎたかしら、と思い、ただ笑った。
彼はそれ以上深くは続けようとせず、花乃と同じ大学に俺の弟も行ってるよ。と、自然に会話の矛先を変えてくれた。
「弟?」
「今2年。」
「ああ、それならきっと会ったことないわ。キャンパスが違うから。似てるの?」
「さあ…よく似てるとは言われるけど。」
それなら、おそろしく魅力的な男の子に違いないわ。私は危うくそう言いそうになってしまって、慌てて口を閉ざす。
彼との時間は本当に楽しくて、あの夜のように抱き合ったりすることはなくても、私は今までで一番、幸せな日々を過ごしている。
だけど、結論を先送りにしている。