…だけど、どうしても
2.
リーアンは本社をフランスに置く、酒を取り扱う大手ブランドだ。ホテル事業を中心に展開している芹沢コーポレーションと、昔は家具が主だったが、今では流通全般を幅広く取り扱う東倉商事が、双方そのパーティーに招かれるのは驚くことではない。
そもそも、その昔、俺の祖父が東倉商事を手にしようとしたくらい、密接に関わり合うことも有り得る業種なのだ。その近辺のパーティーに花乃が顔を出して回っていたのなら、俺が無精でさえなければ、もっと早く出会っていた。
などということは高木に言われなくても俺も重々承知しているわけで、花乃が足を運ぶパーティーに俺がぶつけて出席するのは、予め情報さえ入っていれば、容易い。今だって俺はこうして会場に向かう。
「カーッ、もう驚きのフットワークの軽さ。二人してこんなとこに出入りすんのなんか、学生以来だろ。何年ぶりだよ?」
背後から高木が俺に追いついて、どこからか手を回して入手した招待状をレセプションに示しながら、相変わらず挨拶も無しに、会話の続きのように話しかけてきた。
「うっせ、下衆が。」
「お前の色恋なんか酒の肴。せいぜいうまいもん食わせてくれよ。リーアンの酒に相応しいくらいのな。」
「洒落たつもりか下衆が。」
いそいそとしているのはむしろ高木のほうだ。あのアイスドールと、女たらしの昔馴染みのカップリングを見物するのだと、張り切って仕事を切り上げてきたらしい。
今でさえきちんと招待状を提示してはみせるが、俺はどこへ出入りするのにも顔パスだったし、高木は俺の招待状を振りかざし、一緒に遊び歩いたものだ。あまり素行はよかったとは言えない。横柄で生意気だった態度はもちろんだか、何しろ女絡みで人間関係を荒らした。