…だけど、どうしても

「いいの、やめないで。」

私が、昨日すごい力で押さえつけられて痛む腕を上げて紫苑のうなじを撫で、引き寄せながら言うと、意図を悟った彼は眉を曇らせた。

「でも、お前、体が…」

「いいの。」

私は貴方に怯えたりしてないし、昨日の夜のことも苦痛なんかじゃなかった。それを、わかって。

「…好きよ。紫苑。」

胸から腰へ手を這わせながら囁くと、紫苑は息を漏らし、私の顔の横に置いた手を握りしめた。耐えたりしないで。促すように腰を撫でた。観念したように紫苑が言った。

「…優しくするから。」

「ありがとう。」

くすっと笑って言うと紫苑もつられたように少し笑った。
それから、昨日の夜をやり直すみたいに、彼は慎重にゆっくりと私を抱いたけれど、私の身体はぐったりしてほとんど動かなかった。だけど彼の快感に歪むの彼の顔、震える睫毛、のけぞる喉仏のライン、見上げる何もかも美しくて、私は見惚れた。
熱い息を吐き出しながら、彼が耳元で呻いた。

「ごめん。こんなこと…」

「どうして?」

私は持っている全ての優しさをかき集めて声音を作る。彼は答えず、息を荒げている。
律動が切なさを増していく。

「悪いっ…」

そう言って彼は果てた。

「好きよ。」

余韻に震える彼の身体を抱きしめながらもう一度言うと、紫苑はまた優しくて長いキスをしてくれた。
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