…だけど、どうしても
年越しの前に家族が揃うから花乃を紹介したい、と言われた時は、恐れ多いと一度は断った。
けれど、これまで姿を見せることがなかった紫苑が、時折あちこちのパーティに顔を出すようになって、それが私が出席しているものに限られているということに気づく人はだんだんと増え、特別親しく振る舞っているつもりはなくても、私達の仲は次第に噂になっていった。
どこまでご家族の耳に入っているかはわからなかったけれど、紫苑は私のことを自分の口から説明してあると言う。
この状況でご挨拶をしないほうが失礼だと思い直し、改めて承諾したのはクリスマスの夜のこと。
彼の寝室のベッドでたっぷりと愛された後、まどろみながら、今までで一番幸せ、とふと思った瞬間、目が覚めた。
顔を傾けて紫苑を見ると、彼は寝顔だったはずの私の顔を、愛しそうに見つめていた。急に私が目を開いて見つめてきたので、身じろぎをして、抱きしめなおしてくれた。
こんなにも、愛されている。
そう、私は紫苑と出会った日、あの日が、きっと人生で一番幸せだったと、紫苑が再び私を見つけ出して捕まえてくれるまでずっと思っていた。
だけど、昨日も今日も、この腕に包まれて、あの時よりも満たされて、これ以上の幸せがあるなんてちょっと考えられないくらい、紫苑と過ごす日々があまりにも幸せで、怖いくらい。
そして、だけど、そんな日々を紫苑がずっと続いていくように、守ろうとしていくれていることが、何よりも嬉しかった。
だから、私もちゃんと紫苑に応えたい。
行くわ、と言った時の、紫苑のきれいな顔に嬉しそうに広がった穏やかな微笑みを、私はきっと忘れることができない。