…だけど、どうしても
目を覚ますと、もう外は暗かった。
壁一面の窓が、東京の夜景を映し出している。
俺は身体を起こしてベッドに座ったまま、ぼんやりとそれを眺める。
どうしようもない虚無感だった。
数時間前の彼女との出来事が、苦く頭に貼り付いて、他に何も考えられなかった。
たかだか一時間やそこらで一人の女にそこまで夢中になるなんて、普段の俺からは考えられないことだった。
しかし腹は減る。俺はため息をついて、ルームサービスでも頼もうと腰を上げかけて…思い直した。
待て、もしかしたら、彼女はまだこのホテルに居るかもしれない。
お見合いに連れてこられたなら、泊まる予定も無いだろうが、時計を見るとまだ19時だった。まだ望みはあるような気がした…
どこに。とりあえず、ラウンジに?いなければまた探せば良い。夜は長い。それでもいなかったら…
いなかったら?
忘れて、明後日からまた仕事をして、時々、適当に寄ってくる女と寝て…
いや。
俺は一人で首を振る。
それはもう無理だ。今までのようには戻れない。
俺は彼女を忘れられないだろう。
今日見つからなくても良い。
近いうちに絶対に見つけてみせる。
俺は、決意を固めてバスルームへ向かう。
熱いシャワーを頭から浴びながら見動きをせずにじっと考える。
見つけたら…彼女はまた逃げるだろう。さり気なく、笑顔で。
俺にはどういうわけか、そんな確信めいたものがあった。
だけど逃がさない。今度こそ、呆気に取られて、ただ見送るなんて無様な真似はしない。
どんな手を使っても。
怯えられたって良い。優しくして失敗した。次はどんな手を使っても捕まえる。