…だけど、どうしても

「何度も、あの男に抱かれたわ。何度も何度も、何度も何度も何度も…!!」

「花乃、もういい。いいから!」

その身体を押さえ込んで力を込めて抱き続ける。

「あなたには、こんなこと、絶対に知られたくなかった。だけど黙ったままあなたと付き合っていくなんていけないって、わかってたの、それなら離れなくちゃって、だけど、どうしても…!」

花乃が崩れ落ちる。俺も一緒に膝を床についた。腕の中で花乃が震えて、泣いている。

「ごめんなさい…初めから間違ってたの、でも、幸せで、だけどこれ以上…」

「いいんだ、花乃、もういい。」

だから、ずっと。
今までの花乃の行動の謎が全て解けた。
だから俺に捕まりたくなかったのだ。
付き合い始めてからも、俺に求められると、いつも微かな躊躇いを見せていた。
飯沼に再会して、これ以上は続けられないと思ったのだろう。だからあの後、俺を求めたのだ。もうそれきり、最後にしようとして。

「花乃…花乃、いいから。俺を見ろ。」

花乃は顔を上げない。上げられない。
ずっと苦しんでいたのだ。
俺は片手で小さな顔を上げさせた。潤んだ瞳に俺が映っている。
泣いて、熱くなった唇に指で触れてから、口づけた。
花乃は反射的に離れようとする。だけど俺は抱き締める腕を緩めないし、頭を押える手も離さない。
宥めるように、やがて深く。花乃の身体から次第に力が抜けていく。

「花乃…好きだ。もう逃げようとするな。」

「そんな、だって…私、汚い…」

「馬鹿、そんなわけないだろ。」

俺は叱るように言って、それから何度も好きだ、と言った。好きだ、好きだ、好きだ。
花乃はまた泣いて、両手で顔を覆い、頷いた。
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