…だけど、どうしても
「終わりなんか来ない。」
紫苑がはっきりとそう言った。
彼の部屋のソファに身を沈め、ぽつりぽつりと吐く私の告白を聞き終えて、彼は唇を引き結び、何処か一点を見て、闘う眼をしていた。
こんな顔をさせたくなんかなかったのに。
「…ごめんなさい。」
「なんで花乃が謝る?」
「だって…私が…あなたを…」
何て言ったらいいのかわからない。謝ることが多過ぎるのに。紫苑はあまりにも簡単に、私を許してくれた。
本当にこれでいいの?
「誤解するなよ。花乃は俺に対して悪いことなんか何もしてない。だから謝ることなんか何もない。俺が悔しいのは、もっと早く花乃に出逢えていたら、花乃にそんな顔をさせずに済んだかもしれないのにってことだ。」
そんな顔をさせずに?
奇しくも同じことを考えていたことに、胸が疼く。
私はどんな顔をしているのかしら。
「だけど、もう出逢った。今は俺がついてる。これからは何も心配するな。」
それから紫苑はふと私に顔を向けて微笑んだ。
「周りに言われるまでもなく、俺、自分でも不思議に思うことがあったんだ。別に権力には興味が無いのに、どうして俺はこんなに力をつける事に必死になってるんだろうって。入社してからずっと、仕事は面白かったけど、尋常じゃないって言われるほど働いて、地位上げて。でもやっとわかった。きっと全部、今、花乃を守れる立場にいられること、この為だったんだな。」
そして安堵したように、噛みしめるように言った。
「間に合って良かった。」
それから、信じられないことをさらりと言った。
「婚約しよう。」