大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
「………」



「………」




黙って追いかけてきたこと、こっそり覗いていたこと。

気まずくて、あたしは何も言えない。


龍生のほうも驚いているのか、何も言わない。



無言のまま見つめ合うあたしと龍生を、子どもたちが不思議そうに見上げていた。




「なに見つめ合ってんだよー。あっつあつー?」



一人のマセガキがそう言うと、まわりの子どもたちも「ラブラブー!」とはやし立てはじめる。


龍生がマセガキの頭を無言でこつんと殴った。



「いってぇ! りゅーせー、乱暴だぞ!」



マセガキが両手で頭を押さえて、わざとらしく痛がる。



「そーだそーだ、暴力反対!」


「このヤンキーめ!」


「らんぼー!」



龍生はわいわいとまとわりついてくる子どもたちを「黙れ、ガキども!」と一喝した。


そのとき、龍生の足下で「きゅうん」と切なげに鳴く声が。



視線を落とすと、つぶらな瞳がまっすぐに龍生の手を見つめている。




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