大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
………そうだったっけ?


あたしは幼少期の記憶を呼び起こす。



―――



『ぴんぽーん』


『はーい。あら、龍生くん! いらっしゃい』


『おばちゃん、こんにちは!』


『こんにちは』


『これ、てみやげです』


『あら、わざわざごめんね、ありがとう』


『まりな、いますか?』


『いるわよー。さ、あがって』


『おじゃましまーす』


『どうぞ。鞠奈ー、龍生くん来たわよー』


『ひいっ、りゅーせー!』


『あんだ? こら! モンクあんのか、まりなぁ!』


『なななないですっ!』




………たしかに。


お母さんに対しては礼儀正しかったかも。


あたしに対しては、幼稚園児のくせに立派なヤンキー口調だったけど。


なんなのよ、その違いは。



あたしがむかむかしている横で、龍生が「あの」と口を開いた。



「お願いがあるんですけど………この子犬、引き取ってくれないですか?」



お母さんがにっこりと笑って、「もちろん、いいわよ」と答える。



「そろそろ新しいワンちゃんが欲しいと思ってたのよね。

ちょうどいいタイミングだったわ」




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