大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
その瞬間。



「―――待てや、コラァ!」



三歩も行かないところで、あっけなく腕をつかまれてしまった。


不意を突いたつもりだったのに、二人はどうやら、あたしが逃げ出すのを予期していたらしい。



「………ちょっと、なによ!

やめてよ、離して!!」



あたしは精一杯の声で叫んだ。


………つもりだったのに、口を塞がれてしまって、声は出なかった。



そのまま二人に両側からつかまれて、引きずられるようにして、近くのひと気のない路地まで連れ込まれてしまった。



「だめじゃーん、マリナちゃーん」


「逃げようとするなんて、悪い子だなー」



気味の悪い猫なで声で二人が言う。


それから、ロン毛ががらりと表情を変えた。



「………黙って言うこと聞かねえと痛い目みんぞ、オラァ」



恐ろしい目つき、ドスのきいた低い声。


一瞬にして背筋が凍った。





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