大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
「え? な、なにこれ?」





戸惑って龍生を見上げると、龍生は真っ赤な髪をがしがしと掻きまわしながら、





「………あー、なんだ、その………さっきの玉子焼きの礼だよ。

俺様は義理がたい男だからな」





と呟いた。



驚きのあまり何も言えずにいると、龍生がしびれを切らしたようにあたしに視線を戻した。



それから、いつもの恐すぎる顔であたしを睨み下ろしてくる。





「おいこら、鞠奈ぁ!

この俺様がわざわざ買ってきてやったんだぞ!?

食わねえなんて言いやがったら、ただじゃおかねえからな!」





いきなり怒り出した龍生の形相に恐れをなして、あたしは、「はい食べますもちろん!」と即答した。



龍生はしばらく確かめるようにじろじろとあたしを見つめ、それからぐっと顎を上げた。





「ふん、言ったな。

絶対に食えよ。


………あと、お前のかーちゃんに、玉子焼きうまかったって伝えとけ。

じゃあな」





それだけ言って、龍生はゆったりとした足どりで廊下へ戻っていった。



あたしはプリンを両手にのせたまま、呆然とその後ろ姿を見送った。




< 54 / 248 >

この作品をシェア

pagetop