大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
「ちょっと、龍生!」



あたしは慌てて龍生の袖をつかみ、くいくいと引っ張った。



「あんたなに挑発しちゃってんのよ!

あんなに怒らせて、もし負けたらどうする気!?」



「だから、俺は負けねえって」



「分かんないでしょ! 怪我とかしたらどうすんの!」



「………はぁ? 怪我なんかするわけねえだろ」



龍生が怪訝そうな顔で首を傾げた。


こいつ、ほんとにバカじゃない?

三対一で殴り合いの喧嘩なんかしたら、怪我するに決まってるじゃん。



あたしたちがそんな言い合いをしている間に、坊主頭は拳を握りしめたまま、その他の二人とぼそぼそ相談のようなものをしている。


やばい、あれは絶対、どうやって挟み撃ちにするかの作戦会議だ!



あたしの焦りはピークに達した。


というのに、龍生はノリノリで拳を握りしめている。

やる気満々じゃん!


もう、話の通じないやつ!



あたしは説得を諦めて、龍生の腕をがっちりと抱え込んだ。



「………と、とにかく、逃げよ!」



そのまま龍生を引きずるようにして、駅の改札に向かおうとする。




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