大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
「なに言ってんだよ、鞠奈!

男たるもの、勝負を挑まれて逃げるわけにはいか」



龍生がそう言った瞬間、坊主頭たちが振り返った。



「おいコラ、赤川ぁ!!

てめー、逃げるつもりか、この野郎!!

そうはさせるかっ!!」



坊主頭が叫び声を上げてこちらに駆け寄ってきた。


そして、拳をぶんっと振り上げる。



………もうだめだ!!


あたしは反射的に両手で顔を覆い、ぎゅっと目をつぶった。



硬いものがぶつかり合う音がして、血が飛び散り、なんだったら歯が折れて地面に転がったり―――

―――するのを一瞬のうちに想像して、あたしは気を失いそうになる。




坊主頭の拳が迫ってくる気配がして、


「サアーっ!!」


という奇妙な叫び声がした。



………サア? ってなんだろう。


『さあ、やるぞ』とか?

『さあ、覚悟しろ』みたいな?



不審に思って薄目を開けると、坊主頭の怒り狂った恐ろしい目が、まっすぐに龍生を睨んでいた。


振り上げた拳を、坊主頭が振り下ろす。


龍生は余裕のある表情でにやりと笑い、同じように拳をぐっと突き出した。


あたしはもう一度ぎゅっと目をつぶる。




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