大っ嫌いだ、ばかやろう!-最強ヤンキーの不器用な溺愛-
「イショーワ!!」



坊主頭が凄みのある声で叫ぶ。



………『イショーワ』?

なに、この変なかけ声は?


さっきは『サアー』って言ってたよね。



サアーイショーワ?


………『最初は?』



訳が分からず、あたしは再び、そろそろと瞼をあげた。



うなるような音をたて、風を切りながら振り下ろされた二つの拳が、今にもぶつかり合いそうな勢いで接近する。


切羽詰まった坊主頭の顔と、余裕の笑みを浮かべている龍生の顔も、ぐぐっと近づく。



あ、とうとう殴っちゃう、と思った、その瞬間。



「グーっ!!」



坊主頭が叫んだ。


殴り合いの音はしない。



え? と思って見ると、二人は至近距離で拳を向かい合わせに並べている。



………なにこれ、どういうこと?

殴らないの?


え、もしかして、お互い空振り?



いや、ちがうな。


さすがに分かった。


坊主頭が叫んだ言葉をつなげると。



―――『最初はグー』だ。




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